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真逆の世界を泳ぐ♡

気になって仕方なかった薄紫は、変容の色だった‥

チチカエル

30代半ばで「何か」に目覚め、突然家族を置いてフランスへ旅立った父‥‥。

訳も分からず夫の両親と同居したまま、手につけた職である「理容師」をしながら、3人の子どもを育てる母。

訳も分からず、「なんかお父さんどっかいった!」と思いながらも毎日元気に過ごす、長女ゆっちゃん(小5:私)長男かんちゃん(小4)次女よっち(6歳)の3兄弟。



ある日突然、「チチカエル」。




今日はそんなお話。(笑)





学校の帰り道。私、ゆっちゃんと、弟かんちゃんは、いつものスクールバスで、いつものバス停に降り立った。



いつもケンカばかりのかんちゃんと、付かず離れずしながらてくてくと、家に向かって歩いていく。



トンネルを抜けた頃、




「ゆっちゃああああああん!!!かんちゃああああん!!」



息を切らして、末っ子のよっち、が走ってくる。

な、なんだ、どうした、よっち!


「お、お、お、お父さんがかえってきたぁぁぁ!!!」



な、なんて??
((((;゚Д゚)))))!!


固まる3兄弟。
もう1年以上、会っていない。





「うっそー!!!」
「みた??」
「まだ!」




混乱しながらも、走る3兄弟。





おそらくそのとき、3兄弟の胸の内は、「やっと、お父さんに会える!」なんてかわいい心境じゃなかった。

何かに目覚めて覚醒した父。妻や両親になんて説明したのかはわからないが、サラリーマンを辞めて突然の渡仏に、もめにもめたのは言うまでもない。


何かを押し殺すようにしてただただ日々の生活を過ごすしかなかった母。



父の渡仏から1年あまり・・・





そこへ突然の父の帰還。




チチカエル。




子どもながらに、


これから帰る家の状態の想像はついた。





きっと修羅場でしかない、と。



恐ろしい予感と共に、3兄弟、家に着く。




無言のまま、息を潜めて、そーっと入る。


家はシーンとしていた。




誰もいないみたいだった。


そうか、おかーさんはまだ帰ってないのか・・・。




おばあちゃんをみつけた。


おばあちゃんはそっと、「二階にいるよ」と。
上を指差す。



お前が先行けよ、お前が見てこいよ、とダチョウクラブのようにゆずり合う3兄弟。



意を決して長女が先頭をきり、ますます息を潜めて階段をのぼる。




一段一段、きしまないように、そーーーーっと・・・





二階はシーンとしていたが、昨日まで誰もいなかった父の部屋に、人の気配。



やはり、いる。



なにかが、いる・・・





障子からは中は見えない。





そこでかんちゃん、そーーーーっと指をなめる。
そーーーーっと障子に穴をあける。




押し合いながら、覗き込む3兄弟。







見えたのは・・・・・






ソバージュロン毛に
黒い重そうな服を着た後ろ姿・・



ま、魔女??


と、3兄弟はまじで思った。
あれ、誰よ??さぁ??





つぎはわたし、わたしー!と押し合いながら障子の穴を覗いていると







「おお、帰ったかぁ〜?」

と、聞き慣れた声。



いや、帰ったのはあなただし、とココロが勝手にツッコむ。




ば、ばれてるぅ((((;゚Д゚)))))))ヒイイイイ





穴に向かって振り向いた、ソバージュロン毛魔女は、





まぎれもなくなつかしい瞳の
お父さん、でした・・・




「う、うん。ただいま・・・」




そこからは、部屋へなだれ込み、久しぶりの、親子の再会。
じゃれ合ったり、質問攻めにしたり。




見た目は魔女になってても、あやしい重そうなネックレスぶら下げてても、変わらぬ父でした。



ユーモアたっぷりで、子ども好きの、父。
怒ると「しりをだせー!!!」と、ケツバットする、父。
ダジャレばっかり連発する、父。
エリーゼのために、のメロディーで、「情熱のハナクソ〜♪」と鼻歌を歌う、父。



見た目はとんでもなく変われど、確かに私の父でした。





その当時、わたしは思っていた。




フランスと言えば。




(なんなのかはよく知らなかったがなんかすごいもんらしい、てことで)



なんたって、フランスだもん。
長い間、いなかったんだもん。




お土産は、それ以外にありえないじゃん、と。
そのくらい確信していた。



遠くにいっていた親だもの、当然言うじゃん、子どもだもの。
末っ子のよっち。



「おとーさん、お土産は?♡」




「・・・ああ、あるぞー」




と、ちょっと気になる間のあとに、魔女が出したものは・・・




なんだか長細い、干からびた汚げなもの、と、
なんだか丸い、紙、数枚。
壊れたスタンプみたいなの。




ふ、フランス??これが??



もうなにもあとから出てこないことに、
あまりにも絶句して、
絶望して、涙が出そうになる3兄弟。




魔女父の解説が始まる。


「これは、マンゴーという、南国の果物のタネでな、うんまいんだぞー、お前らにも食べさせたいと思ってなー!それからこれはな・・・コースターっていってな、飲み物の下に敷く、・・・・」





・・・とうさん、ここは北国、岩手です・・・
南国のタネは、そのマンゴーとやらは、岩手で、育つのですか?



賢い長女は思いました。





とうさん、お金がなかったのですね?

それらはみんな、タダですね?

フランス人形は、買えなかったのですね??





それだけが、楽しみだったのに・・・子どものホンネ




もはや、なにも言うまい・・・





賢い3兄弟は、フランスのお土産がないことを受け入れました。
父が魔女になったことも、受け入れました。





子どもはすぐに受け入れます。





んが。





のどかな岩手に、魔女のような風貌で帰ってきた父。

その後、大人の世界はおそらく修羅場だったのでしょう。




長女である私の次の記憶は、数日後の朝、すっかりさっぱりして階段を登ってくる父のイケメンな顔を見た瞬間まですっ飛んでいます。



ちょっと恥ずかしそうに、



「お母さんに切られちゃった」と・・・。
あごをスリスリしながら・・・





くしくも、母は理容師。
得意なカットは、「角刈り」。






寝込みを襲われたらしいです。


こわー((((;゚Д゚)))))))






以上、30年前に起こったノンフィクション、

チチカエル、でした!!!(笑)